いままでありがとうてんぼう
「 うまいが一番、安いが二番の、讃岐うどん、てんぼうだよ。 」
アミューズメントメディア総合学院(現在は学校)の在校生、卒業生、講師の方々なら親の声より聞き慣れたフレーズだ。
御堂筋線の西中島南方駅より徒歩圏内の非常にアクセスの良いところに立ち食いうどん”てんぼう”はある。
しかしそれも過去の話、2019/11/20をもって惜しくも閉店となってしまった。
かくいうワシもAMG在校時にはうどんに興味が無く、てんぼう自体があったかどうかなどそもそも知らなかった。学院を卒業し数年社会人として過ごしていた中、学院関係者よりてんぼうの存在を教えていただき店舗に足を運んだ。
衝撃を受けた、一番に視界に収まりそうにもないとり天の巨大さだった。それに加え、低価格、提供の早さ、うどんのコシ、初めてうどんが美味いと思った。
食中毒スレスレを攻めた絶妙なとり天の揚げ具合(ちなみにとり天が確実に美味しくなる2度揚げテクはもちろん行っている)が無類の肉好きのワシを虜にした。それからはもう仕事が手につかず、とり天の事しか考えなくなった。週に3,4回は行くこともあった。
とり天うどんのデフォルトとり天数は3つだが、それでは物足りず6個、9個と数を増やしていった、大体9個乗せる事が多かったが15個乗せた日もあった、気が狂いそうだ、これでムショ行きだ…
ちなみに出汁はかなり甘めに感じた。讃岐のうどんも食ったが全然違うと思う、讃岐うどんだと思って行くと面を食らうかもしれない。そこは注意されたし。まずいわけではない。
Swarmもこのてんぼうに通い初めてから始めた気がする。てんぼうに来店する度に漏れなくチェックインした。うどんの写真も毎回撮った。我が子の成長を記録するかの如く、アルバムはてんぼううどん一色に染まった。もちろん100回来店も達成した。嬉しかった。クリスマスの日も欠かさず来店して、”クリスマスケーキ”などアホなことほざいてただいつものとり天うどんを食ってるだけであった。
AMGの後輩に毎日てんぼうに来てるてんぼうさんという人もいた。500回ぐらいSwarmで来店してた気がする。頭がおか…いや、”あの頃”のてんぼうだと正直無理もない、行かないと気が狂ってしまうからだ。
ワシは更に頭がおかしくなって、てんぼうをバグトラッキングシステムで管理することになった。Redmineを使って運用中だ。
チケットを見てもらえればわかるが、てんぼうで発生したバグの管理はもちろんのこと、実は本来の目的はてんぼうを通じたソーシャルなコミュニケーションを取りたかったのだ。てんぼうSNSの誕生である。
ここに登録されている人たちはみんなてんぼうを知っている。それだけで気持ちがよかったのだ。店においてある謎の水着のねーちゃんのカード。うどんメニューの値上げ。R-TYPEのゴマンダーみたいなクーラー。とり天Tシャツ。てんぼうを知る人のみが知る人小ネタ、これがすべて通じるのだ。あまりの快楽に絶頂を迎え、てんぼうオーガズムを体験したのだ。
そして転機が訪れる…
いつもの如く、とり天うどん9個盛りという偏差値3みたいなアホメニューを頼む。ほどなくして着丼。しかしそこにはやせ細った老人のような主張の無いとり天の姿が。なんなのだこれは、からあげクンではないか?
致命的なバグ(”おっきいとり天”を”ちっさいとり天”として提供)が発生したのだ。たまにはあるさ、仕方がない。不満ではあるが今日は運が悪いと考え、店を後にする。
それからは不穏な空気がてんぼうを包む…。てんぼうファン各々からの「とり天が小さい」との声が連日てんぼうSNSのタイムラインを染め続けた。
不具合かどうか確かめるべく、再来店した際に遠慮無く「とり天小さくなってませんか?」といつも愛想良くしてくれるおっちゃんスタッフに問いただした。
…やっていた。小さく。ただしそれは上からの命令で、おっちゃんは逆らうことができないとのこと。反旗を翻したらしいが一蹴され、とり天は小さく、衣もカサ増し仕様の醜い姿となってしまったのである。
理由は現状でも不明なままだが、思い当たる節があった。
同タイミングでてんぼうより公式の発表があり、内容は「阪神梅田のスナックパークに2号店を出す」というものであった。
ワンコイン立ち食いうどん、水着のねーちゃん看板、まさに”ワシらの赤提灯”のような汚いオアシスが梅田なんかに出店?どう考えても成功する未来が見えなかった。
それからしばらく西中島店には通っていたが、とり天は改善しないままだったので店に足を運ぶ回数も自然と減る方向に。そして月日が経ち、ついに恐れていたてんぼうスナックパーク店はめでたく開店してしまった。とり天は小さいまま…
ワシはスナパ店には行っていないのだが、写真を見せていただいた。とり天は小さかった。梅田にでかいとり天は似つかわしく無いと判断したのか?梅田でメシを食うのをやめろ。
大した売りもない中途半端なうどんを好立地でアホどもに高額で食わせることに快楽を覚えてしまったてんぼうは、とり天を小さくせざるを得なかった。それが原因だとワシは考える。そうなるともうてんぼうに救いは無かった。
ちなみにスナパにはカドヤ食堂など大阪を誇る有名ラーメン店なども存在する。相手が悪かったのだ。ほどなくしてスナパてんぼうも閑古鳥が鳴く有様に。
そして11/18、1てんぼうファンであるバナナさんより11/20に西中島てんぼう本店が閉店するとのニュースを、夜が更けた頃に知ることになった。この最悪のストーリーは誰しも容易に想像できたと思うが、いざ事実となると身内を無くしたかのような気持ちが宵の寂しさに拍車をかける。
残された2日間、てんぼうはまさかの行動に走る…
普通に考えて、ラスト1日のために故障した機器を修理する訳もなく、最終営業日の11/20まで店は開かず、そのまま閉店となった。てんぼう史に残り永遠と語り継がれる伝説の出来事となってしまった。
未だに阪神梅田のスナックパークにあるてんぼうは、2019年11月時点で現存しているが、こちらも時間の問題だろう。
てんぼうBTSはしばらくおいて置きますが、tenbou.netドメインの維持費もあるので、何かしらの形でアーカイブにしたいと考えています。
てんぼうを知るすべての人、そして願わくば、全盛期のてんぼう関係者様方々を含め、てんぼう反省会を行いたい所存です。輝かしかったあの頃を、今一度思い出しましょう。
究極にして頂点、うまいが一番、安いが二番のてんぼう西中島店は確かに存在していた事実を、ここに記す。
いままでありがとう、てんぼう。